書道は坐禅と同じ禅修行の一つです。どちらも全ての邪念や煩悩を捨て「今」に身を置きます。

坐禅と書道を行うには、三つの“調え”が重要となります。

“調身”:頭の先を引っ張られているような気持ちで背筋を伸ばし、骨盤を立て、胸を開き、軽く腕を開く。肩の力を抜き、顎を引き、顔は上げたままで目線を軽く落とします。仏像のようなイメージです。

“調息”:口は閉じて、鼻から深くゆっくりと同じリズムで腹式呼吸をします。おへその3センチほど下にんある体の中心の丹田に気を集中します。

“調心”:身と息が調うと、自ずと心は静かになり、調います。あえて心を静めようとはしません。無心になろうと考えることはまだ雑念がある状態なので、なんの執着もなくし、無意識に心が静まっている状態です。

そして、書道で最も大切なお稽古は臨書です。臨書とは、名筆の書をまねることです。これが書道における修行の一つで、形だけまねようと思ってもうまくいきません。

上手く書こうなど一切の自我を無くし、自分でブロックしているこだわりを捨て、心を純粋に開き、無心の状態で書きます。例え雑念が湧いてきても、上手く書けなかったとしても、それはそれで自然なものとして受け入れ、手放します。

例え周りが騒がしかろうと(人生の困難や不都合があろうと)、気が散ること(悩みや苦しみ)があろうと、気を取られることなく、その一本の線(今)にひたすら集中するのはまさに禅の修行と同じだと思います。

すると、文字は生きて“存在”していることに気づきます。時空を超えて作者の筆圧、筆速、息遣い、感情や思いを感じてくるのです。

そこからが一生を通じて学び続ける、本当の書の道の修行の素晴らしさなのだと思います。